宮本常一の「忘れられた日本人」というのを読んでるんですけど、その中に「土佐源氏」ってタイトルの章ががあって、それは橋の下の、筵で囲ったような小屋に住む乞食同然の老人の話を宮本氏が聞き取り、書き残しているものです。
土佐源氏ってどこかで聞いたな、と思い検索したら、そうそう、坂本長利の一人芝居の演目にそんなのがあったんだ、と思い出し、まさにその芝居のもとになったものでした。
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で、こんなものも拾ってきちゃったよー。
この本、「忘れられた日本人」って言うのは、宮本氏が、昭和23,4年頃に、日本中の山村を歩き回って、その土地の老人の話を聞き取り書き起こしているものです。
本の内容についてはこのようにうまく解説しているものがあったので、どうぞ。
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読み出してみると、私が忌み嫌う「田舎」に住む人々の田舎的なものの根元を解き明かしてくれているようで、そこに興味がそそられ読み進んでいったんだけど、この本の教えているものはそんな浅薄なものじゃありませんでした。
ま、とにかく圧倒されるおもしろさがありました。(まだ全部読んだわけじゃないんだ。まだお楽しみは続く)
土佐源氏はとりわけ印象深い。
無学な、碌でもない生き方をし、老いさらばえて乞食をするしかない一人の男の心の奥に宿る純情(このことばはこういうときに使うものなんだなあ)をさらりとちらりと垣間見せてくれる、というものです。
そして、オリジナルは一級のポルノでもあったらしい。
ほとんど関係ない話なんだけど、この老人が住んでいるのが、土佐の山奥の、梼原という土地(の近くだったかな)。
梼原はゆすはらと読む。
山田太一さんの(またかいな)ドラマ「せつない春」に梼原という苗字の男が登場する。
山田さんのドラマ(小説も)には難しい苗字や名前はほとんどでてこない。
男は「繁」だったり「健一」だったり「実」だったり。
女も一般的な普通の名前がほとんど。(わたしゃ、難しい読み方の名前の登場人物が出てくる小説が嫌い)
梼原は珍しく、読み方の困難な苗字だった。
ま、この珍しさがドラマにはちょっと必要だったと言うわけですけどね。
だから、梼原が出てきただけで、「お、梼原かいな」とそれだけで私は土佐源氏という話に、しょっぱなで興味を引かれたわけでもあります。
確か、ドラマの中で「梼原」なる男は、「高知にこのような名前の村があり、もともとはそこの出身である、云々」と言っていたと思う。
ディテールにこだわるタバスコの一面をさらしてしまいました。
しかし、木を見て森を見ずになってはいけないと、いつもダンナを反面教師にして自戒しております。