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川上弘美の「どこから行っても遠い町」という連作短編集を読み終えたとこ。

ここ4日間ほど読んでたのかな。
私はこういう小説、大好きやなぁ、と読み終えてやっぱり表紙を撫でてみたくなりました。
私にとって、読み終えて表紙を撫でるというのはその小説への最上級の表敬です。

短編集なので、その中でもことのほか気に入ったものもありました。
気に入ったものとは別に、「ああ」と感じ入ったものもありました。
それは不倫をする男女の話なんですけど、それを男の目線で語っているというもの。
川上弘美の「冬一日」という短編が大好きって何度か言いましたが、あれに通じるとこがあります。あ、そういえばあれは女の側の目線やったと思いますが。
「冬一日」の不倫男女の、あの男が実は自分で語らせたらこんなこと考えてたのか…
と考えてみるのも面白い。
いえ、全然別のお話です。男女のキャラクターも全然違います。
でも、人間の考えていることはわからないもんです。
「冬一日」の、えっとトキタさんだったっけ、がこっちの高之と同じ感慨を持つことも大いにありえるでしょう。

邪悪極まりない男の、ほんの一瞬胸の中にポッとうまれた純情なんてものもあるでしょう。またその逆も。
それほど極端ではなくても、人の心の中は絶えずいろんな色に変色する。
簡単に誠実、不誠実などと片付けられない。正義も不正義も、不幸も幸せも。
そして最後の短編では死んだ人が語り手となっている。死んでいても生きているみたいにその人は語るのです。
 
ああ、そういう小説だったんだなぁ。
読み終えて、本を閉じてその表紙をそっと撫でてしまいました。

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